20年近くATPテニスツアーを牽引したBig3もキャリア最終盤を迎えた2010年台後半〜2020年台。あまりにも偉大なスターが身体的な衰えを理由に試合を欠場し始め、次世代のスターを世界中が求めていた最中、2022年全米オープンで華々しいデビューを飾ったアルカラス。Big3の長所を継承したかのようなそのプレースタイルは多くのファンを虜にしています。
スキル五段階評価
スペイン人選手にありがちな弱点を他の有り余る長所と気合でカバーする ではなく、どの技術のどこをとっても世界トップクラスの非常に優れたオールラウンダーです。そしてスペイン人選手の気合は忘れることなく持ち合わせています。
ストロングポイント
何でもできる究極のオールラウンダー
フェデラーのような攻撃的なフォアハンドや華麗なボレー、ナダルのような鉄壁のディフェンスや高い運動量・そしてパワー、ジョコビッチのような正確無比なバックハンド、それに加えて勝負強さ。アルカラスは若干20歳にしてそのすべてを持ち合わせています。
普通どの選手にでも苦手な展開や苦手なポイントは存在するものです(フェデラーは遅いコートが不得意、ナダルはバウンドの低い速いコートが苦手、ジョコビッチはフェデラーほどでないものの遅いコートが不得意 等)
しかしアルカラスはどのショットを切り出しても相手と対等以上に戦えるので、苦手な相手や苦手なパターンが極端に少ないです。さらにそれらすべてを高い水準で備えており、器用貧乏になることなくすべてを試合の中で重要なポイントに結びつけることができていることも普通ではないことです。
テンポの比較的遅いパワー勝負を強いられても真っ向から打ち合えるし、テンポの速いテクニックを求められる勝負でも対等以上に戦える、そんなかつてのBIG3のいいとこ取りをした夢のような選手です。
実際に2023年では最もタイプの異なる全仏・ウィンブルドンの2大会において全仏はベスト4、ウィンブルドンは優勝とどのコートでも世界トップになれるということをこの若さで証明しています。
最後までアグレッシブさを持ち続ける強いハート
アルカラスの技術が優れていることは火を見るより明らかなのですが、技術的にはBig4に近づいてもなかなか彼らから勝ち星をもぎ取ることができない(できなかった)という選手は多数います。
一方でアルカラスは2022年のマドリードオープン(全仏オープンの前哨戦でみんな気合の入っているマスターズ大会)において、クレーキングナダルとジョコビッチを同じトーナメントで撃破(しかもいずれの試合もフルセットのガン競りの試合)しています。この時若干20歳。。。
Big4といえど人間なのでコンディション不良などでアッサリと負けてしまうことは0ではありません。しかしこのアルカラスは両レジェンド選手を2連続でフルセットの上破るという離れ業を成し遂げています。
どのスポーツどの競技でも似たような話があるかもしれませんが、やはり強い選手はスコア的に肉薄されても勝負所を逃さず戦いきるというすべを持っています。具体的に何が勝利に最終的につながるかというのは当の本人たちでも完璧にはわからないと思いますが、アルカラスには間違いなくソレがあります。
ウィークポイント
攻撃的が故の不安定感
非常に完成されたプレーをするアルカラスですが、プレースタイルがオフェンスを重視した攻撃型の選手であることもあり、時折不安定な戦績を残すことがあります。彼が次世代の王者になることはほぼ間違いのないことですが、かつてのBig4のような圧倒的な存在になるためには不安定な要素を排除し、より効率的にポイント、さらにはゲームを支配する要素が必要になってくると考えられます。
強いボールを軸に戦う選手なので、今後は自分はリスクを最小限に、相手に無理をさせて自滅を誘うようなプレーも身に着けていけるとより戦績が安定してくると思います。
(これが非常にうまいのがジョコビッチやメドベデフ)
怪我の多さ
ダイナミックな動きが持ち味ではありますが、20歳にして既に何度かケガによるツアー離脱を経験しています。この部分は同じ国の先輩のナダルから教訓をぜひ得てほしいです。
ナダルも2004年に華々しいデビューをしてから23歳ごろにあたる2010年ごろにそれまでのダイナミックな動きを基にとてつもないディフェンスを披露するスタイルから、よりポジションを前に取り効率的に得点できるパターンを増やしていきました。
アルカラスはもともと攻撃的な選手ではあるので全く同じとまではいかないものの、ある種クオリティを下げても問題ない部分、もしくは効率化できる部分を見つけて絶対的な選手に成長してほしいと思います。
コメント